中性浮力が苦手な人に教えたい!劇的に上手くなるたった1つのコツ
ダイビングにおいて浮きも沈みもしない状態の中性浮力の状態をキープするのはとてもダイビングスキルの中でも1,2を争うくらい必要なスキル。
しかし、それに反してうまく中性浮力が取れなくて思ったとおりに体を水中で動かすことができない、イマイチ中性浮力の感覚がわからなくて正直、すごく苦手…。という人が多いスキルです。
今回はそんな中性浮力が苦手という人に向けたインストラクターが教える、バシッと定位置をキープできる中性浮力を身につけるコツをお伝えしていきます!
この中性浮力のスキルを身につけるとダイビングの面白さが数段階上がります!これは、言い過ぎではなく本当に…。
水中で自分の体を思い通りに動かせる・水中を漂うフワフワとした無重力感、これらは陸上では体感できないとても面白く不思議な感覚です。
なかなか中性浮力がうまくできな人には、ぜひこの記事でコツを掴んでもらって、ダイビングでしか感じることのできない感覚を味わってもらいたいです!
前半は浮力に関することや、中性浮力に関わる要因などを説明していますので、すぐにコツを知りたい!という方は『中性浮力を練習するならホバリングをまずは徹底的に行う』からご覧ください。
目次
中性浮力とは?
そもそも中性浮力とは、「浮きも沈みもしない状態」のことを言います。
ただ、しっかり中性浮力が取れているからと言って、実は100%の中性浮力の状態ではありません。
なぜなら、ダイビング中は常に呼吸を続けているため体の浮力は変化しているからです。
なので、完璧に中性浮力を取れた状態で息を止めてしまえば、ほぼ100%の中性浮力を取ることはできます。
しかし、ダイビングは肺を危険にさらすリスクがあるため、呼吸を止めてはいけないというルールがあるので、ダイビングにおける中性浮力というのは、先程言ったように100%の完璧の状態ではなく、多少の浮き沈みを自分でコントロールできている状態のことなのです。
「中性浮力って浮き沈みしてもいいんだぁ」くらいのラクな気持ちで練習すると肩の力も抜けてリラックスできますよ。
中性浮力をマスターするとダイビングがラクになる
中性浮力が苦手な人から見るとバッチリできている人はとても格好良く見えますよね!
しかしダイビングで中性浮力が重要なのは、見た目が格好いいからだけではありません。
上手に浮力をコントロールできるとダイバーにとっても、水中環境にとってもメリットがいっぱいなんです。
疲れないのでエアの消費が少なくて済む
中性浮力が取れていないダイバーは基本的にはマイナス浮力の状態ということになります。(プラス浮力だと浮いていってしまいダイビングにならない)
なので体が沈んでいかないように常に上に向かってフィンキックをして水深をキープしようとします。そうすると、常に足を動かしていることになるので、空気の消費が多くなり、エアの消耗が早くなってしまいます。
「周りのダイバーに比べてなぜか自分のエアの消費がいつも早い」という人はもしかしたら中性浮力が上手にできていないために無駄なエアを消費しているかもしれません。
中性浮力を身につけるとフィンキックをしなくても同じ水深をキープすることができるので、体を動かすのは最小限になりエアの消費を抑えることができます。
エアの消費が早い人は呼吸が呼吸が早いということ。呼吸が乱れていると中性浮力は取りづらくなってしまうのでゆっくりとした呼吸を心がけましょう。
ドロップオフでも優雅に泳げる
中性浮力が上手くできない人はドロップオフ(水中の崖)に苦手意識や恐怖心があるんじゃないでしょうか?
沖縄のドロップオフは下が水深30~40mくらいのダイビングポイントが多くその中層を泳ぐわけですが、中性浮力が上手く取れていないと、どんどん沈んでいってしまうため、深い海の底に引っ張られないように必死にフィンキックしていませんか?
すごく深いところに引っ張られるように沈んでいってしまうのは恐怖以外のなにものでもないですよね。
中性浮力を上手にできるようになれば、下がどんなに深い水深でもフィンキックをせずに同じ水深をキープすることができるので気持ちに余裕を持って楽しむことができるようになります。
せっかく楽しく潜りたいのに怖い気持ちだけしか残らなかった…という人がいるのはダイビングインストラクターとしても、とても悲しくなります。
ぜひ中性浮力をマスターして、海中の豪快な地形を優雅に泳いで、海の壮大さを楽しめるようになってください!
急浮上を防止できる
自分で浮力をコントロールでいないと一気に水面に浮いていってしまう急浮上トラブルに陥ってしまうかもしれません。
急浮上を行ってしまうと肺の過膨張などの減圧障害の危険性がとても高く大変危険です。
中性浮力がしっかり取れている=浮力のコントロールができているということなので、ちゃんと自分で浮力のコントロールができていれば急浮上トラブルの危険性をグッと下げることができます。
安全な浮上速度は1分間に18mよりも遅い速度と言われています。自分が吐く泡を追い越さないスピートが目安。
ロープを使わないフリー潜降・安全停止ができる
ボートダイビングの際はボート上からいきなり水深のある海に飛び込んで潜っていくので、水底沿いに潜っていけるビーチダイビングとは違い、浮力をコントロールしながら潜降していくスキルが必要です。
また安全停止をする際もロープなどを持たずに-5mの水深をキープして行うことができるようになります。
これらのスキルはボートダイビングでも特に、大物狙いで行うドリフトダイビングに参加する場合は必須スキル。
ボートを固定する「アンカーリング」を行わないドリフトダイビングは自分のコントロールで潜降や安全停止をしなければいけません。
砂を巻き上げずに泳げる
真っ白い綺麗な砂地を泳いでいても前の人がモクモクと白い砂煙を上げて透明度が悪くなってしまうとすごく残念な気持ちになりますよね。
もし同じように自分も砂を舞い上げながら泳いでいると思うと他のダイバーに残念な思いをさせているかもしれません。
砂地の砂をフィンキックで巻き上げてしまう原因は、足が下を向いた状態の立ち泳ぎを行っているからです。
中性浮力が取れていて姿勢が理想的な流線型の状態であれば砂地の上でいくらフィンキックをしても砂は舞い上がりません。
周りにも迷惑をかけずみんなで気持ちよく潜ることができますね。
サンゴなどの海底にいる水中生物を傷付けない
海底が砂地であれば砂を舞い上げて透明度が一時的に悪くなるだけですみますが、サンゴなどの水中生物の場合はフィンで蹴って傷つけたり、壊してしまう恐れもあります。
沖縄には一面サンゴが広がるダイビングスポットもたくさんあるので、そんな綺麗なサンゴを傷つけたり壊したりしなように中性浮力を身に着けておきましょう。
ざっと上げただけでもこんなにメリットがたくさんあります。
この機会に中性浮力をマスターして格好いい、そして水中環境に優しいダイバーになりましょう!
中性浮力に関係する要因たち
ダイビングにおいて中性浮力に関係する要因は以下のようにいくつも存在ます。
- 適正なウエイト量
- 器材をしっかり装備する
- 水中での姿勢
- BCDの操作
- 呼吸のトリミング
- 水深の変化
- タンク残圧の変化
最初のうちはいろいろ考えないといけないことが多くて大変…と思うかもしれませんが、慣れてくると考えずとも自然に体が対応できるようになりますよ。
では、それぞれがなぜ中性浮力に関係しているのか詳しく見ていきましょう。
適正なウエイト量
ウエットスーツやアルミタンクなどには浮力があるためそれを沈めるためにウエイトをつけて潜ります。
基本的にはウエイトベルトをつかって腰につけるウエイトですが、そもそも適切な重さでないと中性浮力を取るのが難しくなります。
軽すぎるとそもそも潜ることができませんし、重すぎてもBCDに大量の空気を入れないといけません。
BCD内にたくさんの空気を入れるということは中で空気が移動して水中でのバランスが取りづらくなりますし、BCDへの給気・排気がどうしても多くなり中性浮力の感覚を掴むのも難しくなります。
器材をしっかりと装備する
サイズが大きいBCDだと中で体が動いてしまい、バランスが悪く中性浮力を取るのも難しくなります。
自分の体のサイズに合っているBCDでもベルトの締め込みがしっかりできておらず、隙間ができてしまうと同じように体が中で動いてしまうので、ベルト等もしっかり締め込み体にフィットさせましょう。
一つ一つのウエイトの位置も左右均等になるように、そしてできるだけ体の前側にくるように装着するのがベスト。
なぜなら、後ろ(背中)には重たいタンクがあるので、前にウエイトをつけてバランスを取ることで水中での姿勢も取りやすくなるからです。
水中での姿勢(上に向かって泳いでいないか?)
ダイビング中の理想的な姿勢はうつ伏せで流線型になっている状態。
この時、多くの人がやっている間違った姿勢が、頭が少し上で足が少し下で上に向かって泳いでいるような姿勢。
なぜこのような姿勢になってしまうかというと、中性浮力が取れていないマイナス浮力の状態なので上に向かって泳がないと沈んでいってしまうから、多くの人がこのような姿勢で泳いでしまいます。
中性浮力がしっかり取れている状態でこのような姿勢でフィンキックをしていると上に向かって泳いでいるのでどんどん浮上していってしまいますよね。
泳いでいる時の自分を客観的に見てみて、明らかに上に向かって泳いでいるのに水深が変わらないということは中性浮力が取れていない証拠です。
BCDの操作
ダイビング中はBCDの中の空気を出し入れして浮力の調整を行います。
適正なウエイト量でダイビングを行っていればあまりBCDの調整は必要ありませんが、それでも操作をしなくてもよいということは基本的にありません。
BCDに空気を給気・排気する時は基本的に少しずつ行うようにしましょう。
マイナス浮力の状態で浮力を足したい時に一気に空気を入れてしまうと、浮力を足しすぎてしまい急浮上してしまう危険性もあります。
BCDに給気を行う時はボタンと「ポン」っと押すような感じで行います。
排気をする時も同様に少しずつ行うのが基本ですが、明らかに空気を抜くタイミングが遅く浮上スピードも早くなってしまった場合は、適切な量を一気に抜く必要もあります。
そうならないように適切なタイミングでの排気を行えるようになりましょう。
呼吸のトリミング
ダイビング中の浮力の調整はBCDのみではなく、自分の肺つまり呼吸も使って行います。
イメージ的には大まかな調整をBCDで行い、細かい調整は呼吸で行うといったような感じですね。
水深の変化などで呼吸では調整できないほどマイナス浮力(もしくはプラス浮力)になったらBCDにに給気(または排気)を行いましょう。
BCDでの大まかな浮力調整が合っていれば、息を吸うと体が浮いて息を吐くと体が沈むはずです。
この時、息を吸ったからと言ってすぐに体が浮いてくるわけではなく、少しだけタイムラグがあるのも意識しながら行います。(吐いて沈む時も同様に)
呼吸のトリミングは文章で説明するのはとても難しく、感覚として覚るしかありません。
陸上でもできる練習方法として、フィンピボットやホバリングをしているダイバーの動画を見ながら耳を澄まし、そのダイバーと同じタイミングで呼吸するのがおすすめです。
これをやっておくとイメージも付きやすいですし、感覚としても覚えやすいですよ!
水深の変化
潜っている水深が変わると水圧の強さが変化します。
それによってウエットスーツやBCD内の空気が圧縮・膨張するので浮力が変化するわけです。
例えば、水深5mでバッチリ中性浮力が取れていても、そのままの状態で水深15mに行くと水圧の力で浮力が小さくなり、マイナス浮力で体は沈む状態になってしまいます。
なので水深が深くなればBCDに空気を足して、逆に浅くなったら空気を抜かなくてはなりません。
常に水深を意識して操作しなくちゃいけないと思うと「そんなに忙しいのか…」と思うかもしれませんが、これも慣れてくるとそこまで意識せずに行えます。
イメージ的に自転車のギアみたいな感覚が違いですかね。
上り坂で重いからギアを軽くする=水深が深くなって思いからエアを足すみたいな感覚ですね。
タンク残圧の変化
ダイビングのタンクにはスチールタンクとアルミタンクの2種類が存在します。
アルミタンクを使ってダイビングをしていると後半残圧が減ってきてタンク内の空気が少なくなると浮力が大きくなります。
仮に全く同じ装備・体型・肺活量の2人のダイバーが水深5mで中性浮力を取っている時に片方は残圧180、もう片方は残圧50だったとします。
残圧180ダイバーが中性浮力を取れている同じ状態で残圧50ダイバーが中性浮力を取ろうと思ってもプラス浮力になっているので浮いていってしまいます。
これはタンクの材質の関係で重いスチールタンクは影響するほど浮力の変化はありませんが、軽いアルミタンクは浮力に影響するほど変化してしまうのです。
中性浮力を練習するならホバリングをまずは徹底的に行う
さて本題に入る前の話が長くなってしまいましたが、ここからが大事なお話。
中性浮力をマスターするには「沈みそう」「浮きそう」という感覚が大切です。『中性浮力とは?』のところでお伝えしたように中性浮力がちゃんとできていても、呼吸をしているので浮き沈みは必ずします。
練習をしていくと実際に体が沈みだす前の「沈みそう」という感覚がわかってきます。
この感覚がわかってそのタイミングで息を吸い始めると、実際に体は沈まずに今度は「浮きそう」となり、そのタイミングで息を吐く・・・これの繰り返しがダイビングの中性浮力なのです。
そして、この感覚を覚えるための練習は泳ぎながらだと難しいので、ホバリングをして”中性浮力の感覚”をしっかりと覚えるといいですよ。
ホバリングで中性浮力の練習をする時に過度にBCDの空気調整をしないとか、目標物を基準にして練習するなど気をつけることはあるのですが、インストラクターである僕がお伝えしたい最大のコツがあります。それが、、、
最大のコツは「姿勢を気にしすぎない」
「え、そんなこと?」と思うかもしれませんが、実はこれが結構大事です。
ホバリングは直立姿勢で行う。というイメージがありませんか?
一緒に潜っているインストラクターがビシッと直立姿勢でホバリングしているので、ちゃんとマネをして同じ姿勢でやらなくてはいけないと思いがちですが、実は直立姿勢のホバリングは結構難しいのです。
特に重いスチールタンクを使用している時は、背中側が重くなるので、足が前方に浮きがちになります。
これを自分で制御しようとすると無駄な力が入って逆にバランスが悪くなったり、気が散ってしまい集中することもできなくなったりしてしまいます。
正直、ホバリング時の姿勢はどんな姿勢でもかまいません。
例え仰向けになっていようと長座の姿勢になっていようと構わないんです。
大事なのは「感覚を掴む」こと。
中性浮力の感覚を掴むことができるようになると体のコントロールも上手くできるようになり、ホバリング時の姿勢もきちんと取れるようになるので安心してください。
何度も言いますが、大事なのは感覚を掴むことなので、自分の呼吸と体の浮き沈みにできるだけ集中して練習するのが中性浮力上達の近道ですよ。
みんながよくやるNGな中性浮力
手を使っている
中性浮力の練習でホバリングをしている時に無意識に手が動かして、浮いたり沈んだりしないようにしてしまうのは結構多くの人がやってしまいがち。
中性浮力が取れていれば手を使わなくても呼吸で浮き沈みを調整できるので、手は使わないように意識してやってみましょう。
上に泳いでいる
やはり最も多いのがこれです。
自分では中性浮力が取れていると思っていて泳いでいても客観的に見て見ると、流線型のうつ伏せ姿勢ではなく、上半身が斜め上に向いていて、やや上に向かって泳ぐような姿勢になっているケースがかなりあります。
「本当に自分は中性浮力が取れているのかな?」と不安な人は一度ダイビング中に自分の泳いでいる姿を動画で撮ってもらうなどして確認してみるといいと思います。
中性浮力苦手克服のまとめ
ダイビングスキルの中でも苦手な人が多い中性浮力。
この中性浮力をマスターするにはホバリングで練習をして徹底的に「感覚」を覚えることが一番の近道です。
ホバリングで練習中はあまり姿勢を意識せず、変な体勢になってしまってもそのまま続けて感覚を覚えることを意識してみてください。